入社して数ヶ月、23歳になってすぐの頃。

本社SSに勤めていた薫は、よく社用車で給油に訪れる、第一営業部の中村浩樹と付き合っていた。

きっかけは接客に当たる機会が多かった薫を気に入った浩樹が、“今度一緒に食事に行こう”と誘った事だった。

大人で優しい3つ歳上の浩樹に、薫もまた好意を寄せていた。

好意を寄せていた浩樹から食事に誘われ、舞い上がるような気持ちでその誘いに応じた。

気が付けば仕事の後に二人で会う回数が増え、二人が自然と男女の仲になるのに、そう時間はかからなかったように思う。

ただ、浩樹からは“社内恋愛はいろいろと面倒だから、他の人たちにはオレたちが付き合ってる事は、内緒にしよう”と言われていた。

アルバイトではなく正社員になると、そんなものなのかと思った薫は、その言葉を信じて疑わなかった。

就職を機に実家を出て本社近くで一人暮らしをしていた薫の部屋に、浩樹は度々訪れた。

二人でいる時はいつも、“薫、好きだよ”と言って優しく抱きしめてくれる浩樹の事が、とても好きだった。

時には手料理を振る舞い、朝までベッドで抱き合う事もあった。