夏祭りの恋物語(1)~不機嫌な浴衣~

 不満な気持ちで大樹の横顔を見ると、彼は怒ったような顔をしていた。でも、耳まで真っ赤だ。

 それが照れ隠しだというのは、その表情を見てわかった。

 そうだよね、私たち同じ中学出身で、高一のときは気の合う友達で、クラスが離れてからお互いを意識し始めて、三ヵ月前にようやく付き合い始めたんだもの。ふざけ合っていたときの記憶があるから、嬉しいけれど恥ずかしいよね。

 私がギュッと大樹の手を握ると、彼が私を振り返った。照れた顔に大きな笑みを浮かべてくれる。付き合い始めてから見せてくれるようになったその表情。そういうのも、大好き。


【了】