それから私のわがままですぐに会計を済ませて、外に出た。
「渚の家ってどの辺?」
「A市とS市の間らへんって言ったらわかるか?」
「うん、大体は。じゃあ私の家とちょっと近いかも」
「莉茉は?どの辺?」
「E市の端っこらへん。だからここからだったら地下鉄一本で帰れるよ」
「そうか、じゃあ案外近いな。電車の線も同じだしな」
駅までそんな話をしながら歩く。
時刻は間もなく夜の9時になる。
それでもやっぱり都会の地下鉄は混んでいて。
やって来た電車を見て、少しため息をつく。
電車の扉が開き、渚に手を引かれてやっとぎゅうぎゅうの電車に乗ることが出来た。
しかも満員電車だから密着度が凄くて。
電車が揺れる度に足元がふらついてほかの人にぶつかってしまう。
そんな私を見かねてか、渚が「ちょっと我慢してな」と言って私を後ろから抱きしめてきた。
驚いて渚を見ようと思ったけれど、なにせ人が多すぎてまともに顔の向きも変えられない。
だから私は頷いて赤くなっているであろう自分の顔を隠すように俯いた。


