翌日、ちょうど、仕事が早く切り上げられた和歩は、遅れることなく、綾子との待ち合わせの場所に行った。
綾子は今日も着物姿で、瑠可が好きそうな小洒落たレストランの前に立っていた。
「すみません。
遅くなりまして」
と言うと、綾子は、
「全然。
私が早すぎたんです。
早く出るように急かされて」
と言う。
「行きましょうか」
と言う彼女に促され、店内に入る。
綾子の父が個室を予約してくれていた。
「父は貴方のことがとても気に入ったようですよ」
とメニューを見ながら、綾子は笑う。
自分などの何処が気に入ったのだろうな、と和歩は思った。
特に面白い受け答えをすることもできないのに。
一真みたいな男なら、また違ったのだろうが。
彼の言動に、目上の人間は最初は引くようだが、その裏表のない性格で、するっと誰の懐にも入っていく。
一昨日、一真の後ろから、罰が悪そうに顔を覗けた瑠可を思い出したとき、綾子が言った。



