翌日、瑠可が職場でパソコンを打っていると、引き出しの中で、何度かスマホが震えていた。

 いつも思うのだが、マナーモードにすると、凄い音を立てて震えるので、かえってうるさいような。

 キリのいいところまで、打って、そっとスマホを手に立ち上がる。

 給湯室に入って見てみると、一真から、何度か着信していた。

 やかましい、とスマホに向かって罵りながら、出てみると、
「もしも……」
と言い終わらないうちに、一真が叫んだ。

「瑠可っ。
 あの日の予約、キャンセルしろっ」

「は?」

「あの日を予約したいってお客様が来た」

 今、そのカップルは衣装を見に行っているという。

「あの、先輩。
 私もお客様ですが」

「俺とタイで挙式するんだろうが」

「バリですってば。
 適当だなあ、もう」
と言いながら、そこだけ訂正したら、まるで、一真と結婚すること前提みたいだな、と思った。

「ともかく、キャンセルしろ」

「嫌ですよー」