そうっと二人で家に入る。

 お母さんたちが心配するからと和歩は言っていたが、親たちはあっさり寝ているようだった。

 まあ、親なんて、そんなものか、と思う。

 実際、会社の飲み会なんて行ったら、もっと帰りは遅くなる。

 一真が余計な電話をしなければ、和歩も特に心配はしていなかったかもしれない。

「おやすみ」
と行った和歩を廊下で自分の部屋のノブに手をかけ、振り返る。

「ねえ、和歩」

「ん?」

「綾子さんとデートとかしてるの?」

 いや、していて当たり前なのだが、何故かそう訊いてしまう。

 そんな暇なさそうに見えたからだ。

 普段の仕事ぶりなんかを見ていると。

 土曜も日曜も、綾子と出かけている風にもない。

 だから、彼女の存在に気づかなかったのだ。

「……忙しいから」
と案の定、和歩は言った。

「ああ、でも、あさっては会うかも」

「そうなの」