少し足を引きずるような音がドアの向こうでしていた。
ちょっと悪かったかな、と和歩は思う。
今まで自分が薦めた本を、瑠可が気に入らなかったことはないので、借りてきたのだが。
ずっと一緒に居るから、なんとなく瑠可の好みはわかる。
そう。
だから、思ったんだ。
最初に佐野一真に会ったとき、絶対、こいつは、瑠可の好みだと。
大体、瑠可は忘れているようだが、あいつは……。
「みんなー、ご飯よー」
下から母親の声がした。
返事をしたとき、ちょうど、
「はーい」
と言う瑠可の声と重なった。
白い壁を見て、少し笑う。
こんな風に、ささやかだが、幸せだな、と感じる時間が好きだ。
壊したくないと願ってしまう。
だから……。



