日曜の朝早く、瑠可(るか)は、一人、その式場に来ていた。

 受付で、笑顔の凍ったお姉さんに見つめられながら、書類に記入したあと、カフェのような場所に通されたのだが。

 どうやら、そこは打ち合わせをする場所らしく、別のお姉さんがメニューを持ってきてくれた。

 なんでも飲み物を頼んでいいらしい。

 ココアを頼んだあと、ガラスの向こうに広がる海を眺めていると、いきなり、側にあるstaff onlyのドアから笑い声が聞こえてきた。

「何処のどいつですか、それっ」

 気のせいだろうか。

 相手も居ないのに、一人で式場を申し込みに来たこの阿呆な女のことを言っている気がするのだが。

 しかし、これ、駄目なスタッフだろ。

 客に丸聞こえだ、と思っていると、その白いドアが開いて、男が現れた。

 ぱっと人目を惹く目鼻立ち。

 体格もいいので、黒系の制服がよく映える。

 げ。

「……佐野先輩」

「瑠可?」

 ドアから現れたのは、高校で一級上だった佐野一真(かずま)だった。

 兄、和歩(かずほ)の友人なのだが、卒業以来、家には来ていないので、なんの仕事をしているのか知らなかった。