会社が早く終わった日、瑠可は、家からふたつ離れた駅で降りた。
住宅街にぽつんとある小料理屋の暖簾をくぐると、仕事帰りのサラリーマンでごった返していて。
来る時間帯を間違えたな、と思ったのだが、気づいたときには、既に遅かった。
忙しく立ち働いていた女将の里(さと)がこちらに気づいて言う。
「瑠可っ。
ちょうどいいところに」
「なにがちょうどいいところ?
私は、此処に集うサラリーマンの皆様と同じに、ご飯と安らぎを求めて、此処に来たんですけど?」
この先の展開を予想しながらも、抵抗するようにそう言ってみたのだが、里は、
「安らぐのなら、家に帰ってからにしてちょうだい」
とぴしゃりと切り捨てる。
鬼か。
カウンターに居た若い男が振り向き笑った。
「誰ー?
娘さん?
よく似てるけど」
「妹のとこの子よ。
やさぐれると、此処に来て、タダで飲み食いしてくのよ」
「払ってますよー、労働でっ。
しかも、会社帰りで疲れてるのにーっ」
と文句を言いながらも、仕方なく、奥の部屋に荷物を投げて、エプロンをとってきた。
テレビのある部屋では、こちらも仕事帰りらしいおじさんが、ご飯を食べていたので、頭を下げる。



