わたし、式場予約しました!

 瑠可は息を整え、
「入らないー」
と言い返した。

 その間も、和歩は止まらない。

「じゃ、抜くわねー」
と母親の呑気な声がした。

「ねえやめて。
 ……お願いっ、やめてっ」

 抑えた声で、瑠可は叫び、和歩の頭を叩く。

「あのときもだ」
 顔を上げた和歩が、抑えた声で言った。

「此処で、一度だけ、お前にキスをした。

 だけど、あのときも、お前はそんな顔をした」

 だからだ、と和歩は言う。

「だから、俺は二度とお前には触れまいと思った」

 申し訳ない、と。

 お母さんたちに対して、申し訳ないと。

 そう思ったことが、あのときも顔に出たようだった。

「お前は俺より、この家族を選んだんだ」

 そう言われ、泣きたくなってくる。

 あの夕暮れ。

 この部屋で和歩が慰めてくれた幼い日。

 私は、和歩と家族になれたことが、ただ嬉しくて。

 それが心の支えとなった。