「ちょっとー、風邪、大丈夫ー」
夜、電話の向こうで眞紘が言っていた。
「大丈夫。
なんだかすっきりしたみたい」
そう言いながら、ダイニングを歩く自分を和歩が目で追っていた。
「一回、熱が上がったからだと思うんだけど」
「気をつけなよ。
そういうとき、調子に乗ってウロウロすると、悪化するんだよ」
ごもっともでございます。
「で、そのボルダリング、私も行っていいの?
綾子さんって人と、二人で話したいんじゃないの?」
「あんた、ボルダリングで呑気に会話できると思ってんの」
いやまあ、それはね、と眞紘は笑う。
「じゃ、帰りはさっさと帰るから、義理の姉妹で仲良く語らいなよ。
あと、風邪、悪化したらやめときな」
じゃあね、と眞紘は電話を切った。
「瑠可、食べられる?」
とキッチンから母親が訊いてくる。
「うん。
お腹空いちゃった」
と和歩がまだ食べているので、並べられたままのおかずを見た。



