わたし、式場予約しました!

 いやいや。
 兄の立場からだって、怒ってもいいはずだ、可愛い妹なんだから。

 まあ、兄だと実感したこともないから、よくわからないが。

 妹として、瑠可がこの家に来ても、自分の中では、瑠可はずっと瑠可で、それ以外の何者でもなかった。

 ただ、彼女が此処にずっと居て。

 ゆったりと時が流れていくのなら、それでいいと思っていた。

 佐野一真が再び、自分たちの前に現れるまでは。

 そんなことを考えている間に、瑠可が風呂から出てきた。

 なんだかわからないが、ご機嫌だ。

 それは別に一真のせいではなかったのだろう。

 瑠可はなにかあっても、次の瞬間には、全然違うことを考えていて、機嫌が変わっていたりするから。

「……おやすみ」

 そう低い声で言うと、髪を拭いていた瑠可が、びくりとした顔をし、

「お、おやすみ」
と苦笑いを返してきた。

 子供のときによく見た、悪さが見つかったときの顔だった。

 さっきの出来事もこいつの中ではそのくらいの軽さなんだな、と思う。

 腹が立つ。

 いやいや。
 そんな風に思っては。

 いやいや。

 そうそう。
 腹立ててもいいんだった。

 俺は瑠可のおにいちゃんなんだから。