「意外とうまいじゃないか」
インスタントの珈琲を一口飲んだ一真は言った。
「うちも先輩の家にあったみたいなエスプレッソマシン、あるんですけど。
後の手入れが面倒臭いから、なかなか使わなくて」
おもたせで悪いが、さっき、一真が持ってきてくれたクッキーを出していた。
他に気の利いた菓子がなかったからだ。
一真は満足そうに、部屋のクッションに座り、珈琲を飲んでいた。
「これがインスタントか。
舐めてはいかんな、最近の技術」
と呟いている。
確かに、インスタントと言えども、部屋中に、いい香りが漂っていた。
なのに、一真は目を細め、
「いい部屋だ。
お前の匂いがする」
と言い出した。
この中でわかるって相当な嗅覚だけど、思っていると、一真は和歩の部屋に面した壁を見ながら、
「そういえば、お前、和歩とキスしたことがあると言ってたな。
なんでだ」
と唐突に訊いてきた。
「兄妹ってことで通そうと二人とも思ってたんだろうに」
何故、今、その話題、と思いながら、
「いや……なんでって」
と言葉に詰まる。



