次の日の夕方、和歩は二駅先まで電車で行った。
何度か訪れたことのある店を覗く。
戸を開けた瞬間に、顔も上げずに里が言った。
「和歩、もう閉店よ」
すりガラス越しのシルエットだけでわかったのだろうか。
滅多に此処には来ないのに。
相変わらず、恐ろしい人だな、と和歩は思った。
「いや、ちょっと顔見に来ただけだから」
と言うと、
「なによ。
食べないの?
食べて行きなさいよ」
と言い出す。
いやいやいや。
今、貴女が閉店だと言ったんでしょう、と里を見た。
もう他の店員は帰ったのか、里一人だった。
おじさんの姿も店にはない。
「あんた、結婚するんだってね、おめでとう。
私は呼ばれないだろうから、お祝いは此処に取りに来なさいよ」



