「あんたの相手はもうおしまい。

 せいぜいご機嫌よう」

 ぺろ、と悪戯っぽく舌を出し、身体を捻るようにしてラザーの真上を飛び越える。

 金髪の青年の間抜け面。

 長い髪を風が抜けていく爽快感。

 細かな笑いが胸の底から沸いてきた。

 薄闇のなか、目の端に見えたのは白い白い塔――そこに住まうのは、ひとりの聖女。

 振り返らず、シェイスはラザーを置き去りに、駆け出した。