牡丹の花。花が根元から落ちる様を、人間の打ち首に似ているとし、縁起の悪い花として扱われてきた。

逆に言えば、それだけで人々から避けられてきた哀れな花とも言える。

ーー俺は、そんな花に自身を重ねていた。

誰が打ったかも分からぬ「無銘刀」。
得体の知れないモノをほしがる人がいるはずもなく、使えぬものとして神社に奉納されて早数百年が経った。
最初はただの刀だった俺も、今では刀の「付喪神」として人に近い姿を手に入れた。

参拝客が居る訳でもない。
誰が訪ねてくるわけでもない。
けれど、俺は待ち続ける。
「あの人」と同じ姿で。
かつて俺を使い戦った、最初で最後の主の迎えを、この牡丹と共に。