「喧嘩にもならないのね」と心の中で言う。
イライラとした気持ちは寂しさに変わり、綾香は目をつむった。
このまま優は自分をおいて去ってしまうのだろう――そう思って目を開くと、目の前に優がいて、なぜか彼も寂しそうな目をしていた。

「ごめんなさい」
「いや、俺のせいだ。行こう」

久しぶりに肩を抱かれる。
乾いた関係だけど、それでも優の手から温かい体温が伝わってくる。

「うん」

とりあえずこれでいいと、綾香は優の腰に腕を回した。