「違うわよ。あれは、たまたま優君が同窓生とバーベキューに行ったところを撮られたのよ。アホなキャスターが間違えてカップルだなんて言っちゃったから、私も友達からラインがガンガン入って大変。もう、うんざりしてるんだから、お母さんまでそんなこと言うの、やめてよ。それに……もうすぐ優君と結婚すると思うからから大丈夫」

嘘をついたという意識はない。そうなるレールの上を走っているはずなのだ。

「え、そうなの?」
母の顔がとたんに明るくなった。

「多分、ね。でも、まだはっきり決まったわけじゃないから、周りにペラペラしゃべらないでよ」

綾香の母は、明るくておせっかい好きで、悪意はないけどうわさ話が大好きな、いわゆるフツ―のおばさんだ。そして歳を取るごとに口が軽くなっている。
しゃべるなと言えばなおさら黙ってられなくて、「絶対に言わないでね」という一言を加えて絶対にしゃべってしまう。