明日奈ははじめて幸樹の口から父親の話をきいた。

動物好きで、仕事もきちんとやる人・・・そして、奥様にゾッコンで。
なんとなく、幸樹、芳樹、和樹の人柄もお父さん譲りなのかと理解してしまった。

そして、今は芳樹、和樹のお母さんと再婚してよく旅行して老後を楽しんでいるとか。

(でも、先生の中では自分のお母さんがお父さんにとって最高に愛されていた人だと位置付けられているのね。
いえ、この指輪をみればその通りに違いないわ。)


「ほんとは俺自身がいいのを買ってあげたいんだけど・・・そこまでは・・・できなくて。」


「ううん、それに幸樹先生は作り変えてくれたでしょ。
ありがたくいただきます。
あっ・・・でも、洗い物とか家事をするときははずしますね。
私、あわてんぼうだから、落としたり流しちゃったら大変だもの。」


「明日奈!!!」


「えっ、先生!?きゃっ!」


幸樹は婚約指輪をはめた明日奈を抱きしめるとキスしていた。
明日奈は少し驚いたが、幸樹のうれしそうな表情の長いキスに明日奈もうれしくてこたえずにはいられなかった。

しかし、研究室からする小動物の物音に2人はびくっとわれにかえる。


「やっぱり・・・」

「2人の部屋が必要ね。うふふ。」

「だな・・・あははは。」


充にも2人の結婚式の話を伝えると、充は大人びた口調でこう言った。


「おせ~~よ!父ちゃんの結婚式に出るのは成人式を過ぎてからになってしまうのかとイライラしてたとこだよぉ。
カメレオンやトカゲの観察は得意なくせに、明日奈の観察はダメだなぁ。
ほんとに明日奈を俺がお嫁さんにしなきゃいけないかと思ったぜ。
でもまぁ・・・俺はガールフレンドに困ってないから、美人なママがいる方が紹介しやすいけどな。」


「っ!!充・・・生意気な口きくなよ。」


「父ちゃん譲りだろ。でも・・・ほんとによかった。
俺は幸樹が父ちゃんになってくれて、明日奈が母ちゃんになってくれるなんて去年は夢にも思ってなかった。
普通の家ってどんなだろうって思ってた。
ありがと・・・俺をもらってくれて。」


「バカだな。おまえは幸太郎とは違うって言っただろう。
それに我が家において、小動物にも愛情を注げるヤツは俺に続いていいヤツだという証明だ。
・・・それがわかったらおまえも食事当番にいれてやるからなっ!ひひっ!」


「えっ!?あ、明日奈ぁ!!父ちゃん俺にも当番やれっていうよぉ!。」


「それはいいことだわ。食事は当番制なのは私は賛成よ。
だって、この家の家事って大変なんだもの。
お庭の世話や水やりだけでも大変だし、研究員の皆さんが来られる日はケータリングしたとしても用意が大変なんだもん。
幸樹先生のお給料じゃ、そんなムダもできないから、手作りするでしょ。
準備と後片付けが大変なのよ!」


「わ、わかった。じゃ、俺が水やりも草ぬきも、エサやりもみんなやるから・・・えと、料理も覚えられることからするから・・・。」


「うん、期待してるわよ、充。」