結局、輝彦はとことん3枚目を演じてしまいにきたと、落ち込んだが、明日奈と優奈には従姉妹が1人いて、田舎の旅館で修業中だという話をしたら、輝彦は早速、会いに行ってくるとはりきって出ていった。


「変わり身早い人なのね。」


「うん、けっこう女性と付き合うことにタフっていうか、あいつのいいところかもな。
自分から本気でふることなんてないくせに、いつも自分から3枚目を引き受けるからな。」


「明日奈、従姉妹を紹介して大丈夫なのかい?
その娘・・・独身?」


「うん。昨年高校を卒業して、田舎に行ってしまったの。
昔はね、喘息で悩んだりしてたけど、田舎で療養しててよくなって、中学高校と私たちとも行き来してたんだけど、また田舎に行っちゃった。

電話で連絡したらね、リゾート布施のCEOと話がほんとにできるのかってすごくうれしそうだったの。
彼女も客商売が大好きなの。」


「俺は余計なヤツはひとりでもいなくなってくれた方が、仕事がしやすいけどな。」


「すまん、俺が転がり込んできてしまったから・・・。」


「先生、ライさんに謝ってください。あんまりですっ!」


「悪ぃ・・・そういうつもりじゃないんだ。
ライがいる時間は決まってるのはきいてるし、大切な時間を俺の家が役にたつのならそれはいいんだ。
ただ・・・早めにここは出た方がいい。

明日奈を襲ったやつがもうすぐ釈放されると連絡があった・・・。」


「えっ!!!」


「先生、また犯人がやってくると思ってるんだね。」


「たぶん・・・な。
それに、ストーカー野郎はひとりじゃない。
別のがまた来たら・・・俺たちやこの家の使用人じゃ・・・つらいしな。」


「じゃあ、こうしたらどうかな。
俺たちは1年ここにいる。」


「はぁ?ライ、おまえの仕事は?」


「俺はフリーのカメラマンだからな、日本でも仕事はけっこうくるんだ。
祥万だって、まだ辞表を出したわけじゃないから、これまでどおり獣医の仕事をする。
そしたら、あんたも安心して大学で仕事できるだろ?
明日奈だって、勉強や実習だって祥万が送迎すれば大丈夫だろうからな。」


「そんな、祥万さんはボディガードじゃないんだから・・・申し訳ないわ。」


「俺はかまわないよ。かわいい明日奈のためだし、ライがおまえの仕事だって言うなら俺が適任なんだよ。」


「でも、でも、どうしても祥万さんが時間的に私と一緒に居ることが多いし、けがするようなことがあったら・・・私・・・兄さんが血だらけになったときも、生きた心地しなかったのに。」


「大丈夫だから。俺は大丈夫だから。まかせて。」