「…やっと終わったー!!」

あれから1時間。
普通に長距離走るよりも体力の使う部屋掃除が繰り広げられた。

くそ疲れた……。

さってと、アトリエ行こう。

自室を出て、アトリエの扉を開ける。

ここは入った途端、絵の具の匂いがプーンとする。
私のすごく好きな匂い。
これが好きで毎回毎回扉を閉めておくんだ。

ここは今まで書いてきた絵の他に自分の好きな写真なども大きくして額に入れて飾ってある。
賞状とかと一緒にね。
その中でも一際大きくて目立つ絵が、今までで一番大きな賞をもらったもの。
題名は『トリ』。
まだその頃は油絵をやったことが無かったので、ただ大きい画用紙に絵の具で描いたんだ。
その鳥は色んな淡い色の羽を生やして、大きなまつ毛がある。

何時の日かに観た夢の中に出てきた鳥だ。
その夢で鳥が出てくる前後は全く覚えていない。
それほどあの鳥は印象的だったんだろう。
特にあの頃の私はファンタジーが嫌いだったから、尚更。


そして、描いてるうちにノッてきて時間を忘れるぐらい熱中したのを覚えている。
賞を取ってみんなに褒められて、ファンタジーもありかなと思い始め、視界が広がった。


そして今、私が描いているのは海の上に浮かぶ駅。
もう90%出来てるから、次の画材を探しに行こうとしていたのだ。

今日はあと30分で先生が来るらしいので、それまで少し手直しをする。

「もう少し波が欲しいな。」

最初から作ってあるパレットの中の『青』に少し水を含ませた。