「ただいまぁー」

終礼が終わると同時に自転車を飛ばして帰ってきたから、時刻は3時半。

「あら早いのね。」

「早く帰ってこいっつったろ!?!?」

「そうだけど、先生来るの5時よ?」

………………こんなに息切れする意味だろ。

「そう言っといてよぉ〜」
脱力してへたり込む私。

「まぁいいじゃない!とりあえず部屋の片付けしてらっしゃい。」

「私の部屋ですんの!?」

「当たり前でしょう?あ、それから私もお茶出したら仕事行くからね?」

うちの母は夜勤だ。
いつも5時半ぐらいから仕事に行って、帰ってくるのが1時ぐらい。

父は出て行くのが5時ぐらいで帰ってくるのも母と同じで1時ぐらいだ。

だから、休みの日以外私は一人で晩御飯を食べてる。

ん?
寂しくないよ?

居ないわけじゃないからね。


世の中見たら母子家庭や父子家庭所もあるんだから、私なんかが悲しんじゃいけないと思う。

恵まれてるし。

それに、夜はアトリエに入って絵を描いてるから。

「掃除、30分で終わるから1時間ぐらい絵描いてる。」

「30分なんかで終わらないと思うけど?とりあえず早くしてらっしゃい。」

「はーい。」

私は自室に戻り、とりあえずジャージに着替えて掃除を始めた。




私の家は案外広い。
私は一人っ子だから、自室も15畳ぐらいある。

それに、自室の隣にはアトリエがあって、そこにこもって絵を描いてる。
ベッドは自室にあって親は他の寝室で寝てる。

恵まれてるでしょ?
こんな環境があったから、絵も色々受賞できたりするんだと思う。


……………んだけど、

改めて片付けるつもり見渡すとだいぶ汚い。

クローゼットは泥棒が入ったみたいに全開になって中のタンスの引き出しも服がかかって開いたまま。
ハンガーにかかってる服はほとんどなくて、床に散らばってる。
床といえば、プリントなんかがぐちゃぐちゃになって放ったままだし。
ソファはシワだらけの服の山。
ゴミ箱は溢れかえってて、机の上は買って使ってない新品のノートが積み重なってる。
パソコンはホコリ被ってて、触りたくもない。


……唯一綺麗なのはベッドぐらい。

「………30分で終わらねぇよ。」

先ほど母に言われたことを思い出して、もっともだなと思ったのは口には出さないことにしよう。