「なぜ、泣いてる?
そんなに悲しかったのか?」
須田さんが、私の顔をのぞきこむ。
感情が高ぶって、
思いきり振り上げた手が
須田さんの頬を直撃した。
パチンと音がする。
ふいうちになって、須田さんは私の平手打ちをまともにくらった。
「痛いじゃないか!! 何すんだ」
「これのどこが忘れてるのよ…
家に居ても彼女のこと思って、仕事でも彼女が選んだ男と仕事して。
それを口実に彼女に会って…」
「君に何が分かる」
すごい形相の
須田さんに両手を押さえられ、
そのままソファの上に押さえ付けられた。
「ごまかす為に、抱くのは止めて」
感情に反して涙が止まらない。
私は、腹がたって仕方がないのに。
どうして放っておいてくれないの?
誰かのぬくもりなんか必要ないのに
「そんな理由で、抱くわけないだろ。
抱きたいから、抱く」
この人は、私を愛してるから抱くわけじゃない。
愛してる人を抱くことが出来ないから、私を選んだ。
今、あなたの心が、どこにあるのか、
キスの深さで分かればいいのに。
須田さんの体が私の体の上に重なる。
キスをされると、
抱かれるなら、
どんな理由でもいいと思ってしまう。
優しいキス。いたわるように体に触れる。
「大丈夫?
ごめん…痛かったのか?
腕が痛かったんじゃないのか?」
私は、首を横に振る。
「それとも、まさか、お前、
俺のために泣いてる?」
「深雪に会わせたくらいじゃ、
こんなに怒らないよな?」
そうよ、どうしようもない。
そう思う自分のことも
どうすることも出来ない。


