恋が都合よく落ちてるわけない

「本当に終わったこと?
毎日、彼女と暮らすはずだった
部屋にいてなんともないの?」


須田さんは、
無表情でグラスに口をつけている。

「慣れたよ。今はもう何ともない」

嘘ばっかり。なれるわけないじゃないの。

段々腹がたってきた。


私は、グラスを置くと、
須田さんの顔が良く見えるように、
彼の脚の上に乗った。


私は、彼の顔を両手で、
力一杯、挟んで言った。


「バカじゃないの。

こんなところに住んで、
毎日深雪さんに関係するものに、
囲まれて生活してたら、
傷なんか癒えるわけないじゃないの」


須田さんの目が大きく見開く。


思いきり両手で、押さえたところで、
びくともしない頑丈な顔が悔しくて、
今度は頬を横に引っ張る。


「仕方ないさ、
俺が出て行ったら親が悲しむから」


「彼女が考えて、決めた部屋にいて、
彼女が選んだ男と仕事をして、
どこまでおめでたいのよ。馬鹿」



「馬鹿で悪かったな。なんで、俺、お前にそこまで言われなきゃならん?」


「不幸なことに、今まで誰も言ってくれる人がいなかったんでしょ」



少しは、
歪んで顔が台無しになるかと思ったのに…
どんな表情でも、この顔が憎らしい。