就業時間も、だいぶ過ぎて、人も疎らになってきた。

「千鶴、また残業?
もしかして誰か待ってるねの?」
いや、実加、理由は全然違うけど、帰りたくないのは、事実だよ。


「いまのところ、私には、
ナイトを待って待ちぼうけ食らうより、
仕事した後、美味しいビールでも
飲みたいんだけど」



「なんだ、進展ないの?」
実加があっさり断定した。
ごめんよ、実加、期待に添えなくて。



「そんなことより、今日は?
この間誘ってくれたのに、
行けなかったから、どうかなと思って」


「ごめん、先約があるんだ。
あっ、そうだ。
経理課に同期の子がいるから、

今度どう?
ナイトの話聞いてみる?」
実加は須田さんの事を、
いつの間にかナイトと呼んでいる。


「いいよ。わざわざ、
そんなことで、話聞きにいくなんて」


「大丈夫、大丈夫。
千鶴がくるって聞いたら、飛んでくるよ」



「なんでよ」



「ふふっ… 何ででしょうね。
いいから、セッティングしとこうか?」



「うーん?」



「じゃあ、そういうことで」



セッティングって、私
一人じゃないのか。