恋が都合よく落ちてるわけない

「あ~あつまんない」

「あの、奏君、
このミスターバツって何者かな」

奏が、飲んでいたコーヒーを撒き散らした。

「いきなり何ですか、課長」

「君も知ってると思うけど、
経理部で起きた、不祥事の解決の
糸口になったと言うことで、
大島君の名前が上がったんだけど、
この、床下の配線工事を指示した
私までお褒めの言葉を頂いたよ」


「よかったじゃないですか」


「そうなんだけどね、まったく覚えがないものだから…
それがね、記録を調べたら、
この指示書にミスターバツって
書かれてんだよね。岡崎君も覚えてないっていうし」

「それが、何ですか?」

「いや。何でもないです。
さあ、仕事しますか…」

下田課長は、もう一度奏の方を見た。
奏は課長から顔を背けているけど、笑いをこらえているのがわかる。