恋が都合よく落ちてるわけない

そこには、
無表情の仁志さんが立っていた。

どうしてここに?
助けてくれて、ありがとう…
そう伝えようと思ったのに、仁志さんに話しかけられない。

話しかけられる雰囲気ではなかった。


仁志さんは、何にも言わすに腕組みして立っている。

もっと早く止めてくれてもよかったのに。

彼は、私が口を押さえられ、
胸を揉まれて
倒されて、落合君の下敷きになって
キスされるのをずっと
見ていたに違いない。


「ありがとう」
ブラウスからブラが見えたままだ。


ボタンをはめるまで、待ってから仁志さんが言った。

「立てるか?」


「うん」


「向こうで、岡崎が呼んでる」


岡崎さん?岡崎さんまできてるの?


「はい」


仁志さんと、
口をきいたのはこれだけだった。


暗がりで、同僚の女の子見張ってて、後ろから後輩に襲われるなんて、バカすぎる。


よりによって、
あんなところ見られただなんて。


手はしっかり握ってくれたけど、
口もきいてくれない。


気をつけろって言われてたのに。


もう、仁志さんと口聞けないまま
一生このまま終わるかも。


私は、岡崎さんのいる方へ歩いて行った。
いつの間にか、奥田さんの姿は消え、数人のジャンパーを着た男の人が机を移動したり、片付けていた。


「何、これ?」


が、問題はその事ではなく…
岡崎さんがいなければ、私は、とんでもなく、大ポカをしてたとこだ。