恋が都合よく落ちてるわけない

「奏!」

今度は、岡崎さんに呼び止められた。
落合君と私は、同時に作業の手を止めた。


「なんすか?」


「なんだ?これ?
申請者名にミスター Xって」


「何で俺って分かったんですか?」


「お前の指示書、
何回解読してると思ってる?」


「あの…」下田課長居なくてよかった。

まずい、なんて言い訳しよう。
私達が何かやるつもりだってバレバレだ。


「ちゃんと規定通り書け」


ええっ!うそ…
岡崎さん見逃してくれた。


「書き直します…」
落合君は、ボールペンで課長のIDを書き込んで、岡崎さんに渡した。


「この…工事の時間、9時開始って間違いないの?午前じゃなく?」


「昼間やったら怒られますよ」と落合君。


「それは、そうだけど…」


「立ち会わなくていいですから。
本当に本当に大丈夫です」
と私も岡崎さんに詰め寄る。


「あっそう…じゃ、仁志には言わないよ」


「はい。絶対に言わないで下さい」
岡崎さんは、申請書を持って、フロアを出て行った。


「下田課長、よく許可くれたね」


「いや」
落合君の手には、三文判が握られていた。