静理いわく、自宅に地上直通エレベーターがあるから、天井と家がくっついているらしい。

しかもそれは特権階層にのみ許されるもの。

よって大多数の家は天井に張り付いておらず、普通の外観だった。


狭い歩道を歩きながら周りの民家を眺める。


(日本じゃないみたい。前にテレビでやってたヨーロッパの町並みに似てる…)


彼らの屋敷だって、西洋の城を逆さまにしたような見た目だ。


(不思議な世界…)


道の所々にはガス灯のようなものがあり、青白い光を放っている。

時たま蝙蝠が飛んでいる以外に、生き物の気配はない。

とても静かな住宅街。


「学校は近いんですか?」

「ああ。五分もかかんねぇだろ」

小鳥の横をゆっくり歩くカロンが答えた。

靴音と共に手錠の鎖がカシャンと鳴り、ドキリとする。


(カロンさんと、繋がったまま…)


安全のための手錠とはいえ、カロンだって吸血鬼だ。

小鳥にとって危険な存在のはず。


(でも今は、信じるしかないよね)



三分後、吸血鬼の学校が見えてきた。