私の名はアトゥシ。



"宝物屋"と呼ばれる、

人には言えない仕事を

している。それは・・・

冒険者や戦士達が求める

宝物を各地にうめる仕事。

宝物を探し、その過程で

モンスターや魔術師を倒し、

影ながら、優秀な者が

育つようにサポートする。

それに国に

冒険者達がやって来れば

武器屋や薬屋、宿屋などが

儲かり、国も潤うという

国王の政策の一つでもあった。



私はいま

"ハイクラスハンター"

と呼ばれ、レベルの高い者達用の

宝物を埋めている。

そして今回は

ここ"マルクスの洞窟"に・・・



ここは国の最南端の

山脈のふもとにある洞窟。

たどり着くだけでも

相当の力が必要とされるのに、

マルクスの洞窟は、

中に入ると、40度を超える

暑さを誇る。

とくに強いモンスターが

いるわけでもないが、

暑さで重装備が

できないために、

皆苦労している。だから

ほとんどの者は軽装備で、

革の服一枚に、剣一本

といった具合だった。





洞窟一番奥に

宝物を隠すため、

私も中へと入っていった。

途中何度か

モンスターに出くわしたが

誰も襲っては来なかった。

私に怯えて

手も足も出せない・・・

と言うわけではなく、

本当は私の右腕に刻まれた

"タトゥ"のおかげだった。

国王のシンボルマークの星印。

これは

モンスターにしか見えない、

特殊な技術で彫られいるもの。

もしこのタトゥがある者が

死んでいたり、目的地から

戻って来なかったりすると

大変なことになるからだ。




それは

国王に背いたここと見なされ、

その場所は国軍によって

潰されてしまう。

突如町が廃墟になったり、

山や洞窟が

閉鎖されたりするのは

このための場合が意外に多い。

だからモンスターも

簡単に手出しはしてこない。





・・・宝物を隠し、

洞窟の入口まであと

10メートルほどのところまで

来たとき、急に頭が

ふらついてきてしまった。



暑さのせいだろう。

私はここで倒れてしまった・・・。





気付くと私は、

モンスター達に囲まれていた!

しかしそれは

襲われていたのではなく、

看病されていたのだ。



ここは涼しく、

聞くと熱気が入ってこない、

モンスター達のねぐららしい。

助けくれたモンスター達は

元々、争うことが嫌いな

種族ではあった。

しかし、かつて一匹の

"ファイアードラゴニアン"に

この洞窟を乗っ取られ、

仕方なく人間と

戦っていたのだと。

だが2年前に、

そのファイアードラゴニアンも

ここの暑さにやられ

死んでしまったと言う。

今は残った者達で

ひっそり暮らしているのだと。

最近は人間が来ることも

なくなっていたのだが、

今日は私が

倒れているのを見つけ、

ここに運んできてくれたのだ。

おそらくはこの

右腕のタトゥを

見たからだろうが・・・。



しかし、

命を救われたことには

変わりはない。





私がここに来た目的を

全て話した。

ここに宝物を埋めたこと。

そしてそのうち、人間の

冒険者や戦士達が

やって来ることを・・・。



それを聞くと怒り、

私に襲い掛かってきた!

・・・が、右腕のタトゥを見て

驚いていた。

「ま、まさか・・・これに

気付かずに、私を

助けてくれていたのか!?」





タトゥを見たから

助けたのではなかった!

本当に私を心配して

命を救ってくれていたのだ!





どうしよう・・・

いま私はこの優しい、

命を救ってくれた

モンスター達を、冒険者の前に

さらそうとしている!

一体どうしたら・・・





宝物を掘り返して、

今回のことを、

私を助けてくれていたことを

国王に話すか・・・しかし

任務を果たせず

帰って来たとなると

どうなるだろう。

この政策に力を入れているのに、

背いたとなると

国王の怒りを買い、

最悪処刑ということも・・・

このまま身を潜めるにしても、

私がここから戻らないとなると

この洞窟は国軍によって

潰されてしまう・・・せっか

く助けてもらったのに

この優しいモンスターたちを・・・





アトゥシは

どちらを選ぶのだろう・・・

あなたはどちらを選ぶ!?