私の名はムアホォード。



ここ"魔法塾"に入って早3年。

ついに卒業のときが

やって来た。

しかし一つ、

不安なことがあった。

それは入塾する際に

かわした約束。



ここで覚えた魔法を、

これから使っていくための。

その約束とは

「失敗は許されない・・・」





入りたてのころは

失敗しないことは、

当然のことだと

思っていた。だが、

卒業が決まり

"魔法使い"として

生きていくとなると、

その重みが分かってきた。

いざ人前で魔法を使い、

それが失敗してしまったら・・・



その約束とは、

失敗を目にした者は

"全て消し去らねばならない"

と言うもの。

魔法塾の信頼、魔法への

人々の希望を守るために

作られた規則。

これを守らないと

"大魔法神ゴーラー"の

魔法により、使った者が

消されてしまう!





そんな不安のなか、

魔法塾へ向かう途中、

ひとりの子供が

口から泡をふいて

倒れていた。

そばにいた母親らしき女性が

泣き叫んでいる。

体の弱い病気の子供の薬を、

無くしてしまったのだと。

発作が起き、10分以内に

薬を飲ませないと、

死んでしまうと言うのだ!

薬を探している時間は

もうないらしい。





いま私が使える魔法は3つ。

『瞬間移動』

『体力回復』

そして『火炎攻撃砲』



『瞬間移動』は

百パーセントの確率で、

念じた場所に移動可能。

塾に行き、

もっと私より上のクラスの

魔法を使える者に、

助けを求めるか。

しかし私の技術では

使えるのは一度だけ。

移動して、もし

クラスの上の者が

いなかったら・・・

助かるどころか、

ただ無駄なことを

してしまうだけに

なってしまう・・・。



『体力回復』は

成功の確率がかなり低い

高度なもの。

無理をすれば3回まで

使うことはできるだろう。

しかしこの緊迫した状況で、

成功させられるだろうか。

もし失敗してしまったら、

子供だけでなく

失敗を目にした母親の命まで

『火炎攻撃砲』で

消し去らねばならない・・・





しかし、そもそも

私が魔法が使えるなどと

言わなければ・・・

魔法以外の方法で

救う道を考えるか・・・

時間もない・・・いま私が

出来ることをする・・・

しかし!ここで

使わなければいったい

何のための魔法なんだ・・・





ムアホォードは

どちらを選ぶだろう・・・

あなたはどちらを選ぶのか!?