喉の奥に言葉を押し込み、嬉しかった気持ちは一気にしぼんで行く。


「お……覚えているけれど、休日は予定ができちゃって……」


あたしはしどろもどろにそう言った。


予定があるのは嘘じゃない。


今朝、栞理と遊ぶ約束をしたんだもん。


それなのに、あたしの心は痛んだ。


川上君は残念そうに眉をハの字にして、「そうなんだ……」と、小さな声で言った。


「……っ!」


咄嗟に『嘘だよ! 川上君と一緒に遊びに行きたい!』と、言いたかった。


でも、その言葉は喉に張り付いて出てこない。


「じゃぁ、また暇な時に遊ぼうね」


川上君は残念そうな笑顔を浮かべて席へと戻って行く。


待って!


行かないで!


栞理との約束なんてどうでもいい!


川上君との約束を優先したい!


そう思うのに、栞理の笑顔が視界に入り、あたしは川上君の背中に向けて何も言えなかったのだった。