「亜耶、どうしたの? なにがあったの!?」


あたしの問いかけに亜耶は答えない。


亜耶は口の端から唾液を垂らし、それが胸元まで垂れている。


学校の制服のままということは、あたしと別れてから一度も家に戻っていないのだろう。


あたしの脳裏に、亜耶に声をかけていた先輩の顔が浮かんでいた。


まさか……あの後なにかあった!?


ここは公園内でも人目につかない草むらだ。


こんな所で、こんな状態でいるなんて普通じゃない。


最悪の事態を考えながらあたしはポケットからハンカチを取り出して、亜耶の唾液を拭いた。


それでも、亜耶は呆然としたまま動かない。


よほどショック状態なのかもしれない。


あたしはリリの顔を見た。


リリは大人しくそこにいて、少し首をかしげてあたしを見る。


「リリ、人を呼んでくるからここで亜耶を見ていてくれる?」


そう言うと、リリはワン!と、一度だけ吠えたのだった。