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亜耶という人間が一体どんな人なのかわからないまま、一日が過ぎて行った。


気が付かなければ平和に過ご続ける事ができたかもしれないのに、もうそれも無理だった。


あたしは亜耶に向かって本心からの笑顔を向ける事ができなくなっていた。


あなたは誰?


見慣れた親友の顔が一瞬にしてぼやけて、輪郭がハッキリしなくなった感じだ。


それはとても悲しくて、心にポッカリと穴があいてしまったようだった。


「菜月、一緒に帰ろう」


亜耶がそう声をかけて来た瞬間、栞理が亜耶に声をかけていた。


「ちょっと、来てくれない?」


栞理は険しい表情を亜耶へ向けている。


亜耶はそんな栞理を見て。とまどったように瞬きをした。


栞理の、何かを決意したような表情にあたしはまたゾクリと背筋が寒くなった。


行かせちゃいけない。


そう思う反面、亜耶の正体を知る事ができるチャンスかもと期待がよぎった。


「いいよ」


案の定、亜耶は誘いを断らずに頷いた。