☆☆☆

それから数時間後。


先輩の交友関係のほぼ全員に電話をかけ終えていた。


2人で作業をするとなかなか効率は良いようだ。


しかし、電話で話を聞けば聞くほど先輩が失踪した理由はわからなくなっていた。


先輩は勉強ができて、友達も多い。


けれどその友達は学校と塾の生徒がほとんどで、みんな真面目な人ばかりだった。


会話をすれば先輩の成績や授業態度についての話がほとんどで、悪い噂は何も出てこなかった。


「真面目すぎたから逃げたくなったって事はないよね?」


あたしはそう呟く。


「どうかな? お金もあってカッコよくて勉強もできて。逃げる必要があったとは思えないけど」


栞理がそう言う。


そうなってしまうと、亜耶に関係する暴力団に連れていかれてしまったという説が強くなる。


あたしは下唇を噛んだ。


信じたくないけれど、信じないといけないのかもしれない。