「そういうわけじゃないけれど……」


あたしは真っ直ぐな亜耶の瞳を見ていることができなくて、うつむいた。


今朝は綺麗だった床にほんの少し埃が積もっている。


やっぱり、古い物ばかりを寄せ集めているから、ホコリもたまりやすいのかもしれない。


「菜月、聞いて?」


顔を上げると、亜耶が真剣な表情であたしを見ていた。


「あたしはこの子たちと同じなの」


そう言い、亜耶は古びた机に触れた。


「へ?」


あたしは思わずまぬけな声を出してしまった。


亜耶が古い机と同じ?


「あたしはいずれ捨てられる。この道具たちと同じように」


「亜耶、何を言ってるのかよくわからないよ?」


亜耶もあたしもまだ高校2年生だ。


世間的に言えば未成年で、まだまだ子供。


この教室に集められているのは、使い古された道具。


なにがどう同じなのか、意味がわからない。


「菜月」


「え?」


「人生80年っていうのが当てはまるのは、一部の人間だけなんだよ?」