気が付けば、あたしは湯船につかっていた。


川上君からキスされたあとの記憶がすごく曖昧だ。


でもきっと普通に家に入り、普通に着替えて、ご飯を食べて今に至るのだろう。


あたしは小指で自分の唇に触れた。


その微かな感覚にビクッと体を震わせる。


川上君にキスされた。


その事実がいまだにフワフワと浮いていて、現実味がなかった。


突然の出来事だったし、川上君が何を考えてキスしたのかわからないから、余計に夢のような感覚だ。


「川上君と……キスしちゃった……」


あたしはそう呟き、それと同時に顔は真っ赤に染まってしまった。


まさか、こんな形で好きな相手とのキスを経験するなんて思ってもいなかった。


鏡に映った真っ赤になった自分の顔から目をそらし、湯船を出る。


このままじゃ色んな意味でゆでダコになってしまう。