「いいよ別に。君は俺にとって特別な存在だから」


その言葉にあたしは瞬きを繰り返した。


聞き間違いかと思った。


あたしが川上君にとって特別な存在?


どういう意味?


そう聞こうとした次の瞬間……川上君の顔が目の前にあり、唇に柔らかな感覚が降って来た。


目を閉じる暇もなく、それはスッと離れて行く。


ほんの一瞬の出来事にあたしは硬直してしまった。


「じゃ、また明日ね」


そう言い手をふって帰って行く川上君の後ろ姿を、あたしは立ちつくしたまま見送ったのだった。