「なんでもない」


あたしは亜耶の肩に顔をうずめたまま、答える。


亜耶はあたしの頭を優しく撫でて、小さく笑い声を上げた。


「変な菜月」


「変でいいもん」


「あたしが離れて寂しかったんでしょ」


そう言われ、あたしは顔を上げた。


亜耶はまだほほ笑んでいる。


なんで、笑っていられるの?


離れたのはあたしの方なのに。


なんでそんなに優しくするの。


「菜月、泣きそうな顔してるよ?」


そう言われて、あたしは強く頭を振った。


「……ごめんね、亜耶」


「なにが?」


キョトンとした顔になる亜耶。


「……ごめん」


あたしはまた言った。


「だから、なにが?」


亜耶はまた聞く。