結局、礼服に皺もついてしまうため散歩に出ることになった。
神影神社の屋敷には雪がよく降りそして積もっていたが、里ではきっちりと除雪がされていた。
石庭や鯉の泳ぐ池、花壇があちらこちらにある。
「どこもかしこもきちんとしているな」
「でしょー。面白みが無いったら」
後ろにいる疾風に肩越しに言うと、また笑われる。
「面白みねぇ。でも、芽生に会えたってことは植物たちと仲良くしてたみたいじゃない?」
「そうですね、友達いなかったのでよく森に行ってましたね。一人遊びをしていて、何度も桜木に連れ戻されました」
「ああ、桜木ってあの案内のか?怖そうだなー」
結と文月に挟まれ、露李は曖昧に笑った。
「そんなことないですよ。すごく優しかったんです、お姉さんみたいに」
鬼の姿を見られるまでは。
「そうなんだ。あの人も優しげにしてれば多少は美人なのにね」
「失礼だなー!」
明るく振る舞ってくれるのは露李のため。
そんな気を遣わせてしまったことで自分の不甲斐なさを知る。
少し俯くと、ジャリ、と自分達のものではない足音がした。
即座に顔を上げる。
「あら、風花姫様」
「…野花(のばな)さん」
里にいた頃、同じ教室で過ごした女子生徒だ。
巻いた髪を二つに結って、長く垂らしている。
半分に分けた髪の右側だけが栗色だ。
どなたですか、と文月が訊ねてくる。
「ここでの級友です。野花さん、こちら守護者様です」
野花は男女を二人ずつ従えて歩いていた。
笑って膝を折り、守護者たちに挨拶をする。
「お目にかかれて光栄ですわ、守護者様。露李様とは仲良くしておりましたの。ねえ?」
「ええ。ところで、ここで何を?」
「さあ……露李様こそお屋敷を出て大丈夫なんですか?この気候は貴女のお身体には悪いのではなくて?」
嫌味なヤツ、と思いながらも露李も笑顔は絶やさない。
「ええ、問題ありません」
「そうですか。ええ、そうでしょうとも。何かあれば守護者様が守って下さいますものねえ。良いですわ」
では、と野花が立ち去ろうとする。
それに続く者たちが頭を下げて去り。
「守護者総員迎え撃て!」
結の声が鋭く響いた。
物騒な命令に露李が振り向くと、飛んでくる何かに皆が手を翳していた。
「クナイだね」
露李の顔を見て文月が解説してくれるが、そこではなかった。
何が起こったのか分からなかったのだ。
露李の周りには花が落ちていた。
僅かに浅葱を纏っている。
「【静止】」
静が唱えると、飛んできた刃物がピタリと言葉通りに空中で止まり、今度は理津がそれに紫の気をかける。
紫に覆われた刃物に疾風が拳を叩きつけた。
一瞬の出来事。
だがそれがスローモーションに見えた。


