露李たちが楽しそうに話している様子を、そこにいるただ一人が良く思っていなかった。
桜木である。
失礼だと分かっていながらも、静は密かに力を解放して桜木の様子を伺っていた。
顔に出やすい質であることは分かるが、何を考えているかは分からない。
意識を桜木の心に向ける。
人の心を読むときは、その人の思いに同調しないようにしなければならないが──桜木の意識に入り込むと、静はその思いの強さに少し驚いた。
あまりの憎悪に頭が痛くなる。
───この女が帰ってきた。
私たちの生活を乱す女が。
この女がいるせいで、一族の全てが不幸だと言うのに。
直系だからと言って大きな顔をして。
私達がこの女を罰するのは正しいことなんだわ。
だってこの女は、すぐに言いたいことを言って楽しそうに笑う。
直系筋の娘が感情を出すなんて、何てはしたない。
人形のように神事を執り行ってこそ風花姫だというのに。
この子はまるで守護者様にそのような姿を見せていない。
どうしてこの子ばかりが好かれるの。
早く克雪様に帰ってきてほしい。
克雪様が帰ってきたら、この子を思う存分に躾てあげられるのに。
「……どうして?」
静は思わず呟いた。
こんなにも人の心にマイナスな感情が溢れていたことはない。
それに。
「露李先輩」
呼ぶと、露李はすぐに振り返る。
「なあに?静くん」
「克雪さんって、どなたですか?前に一度、聞いたことがあるような気がしますが」
露李は驚いた顔で静を見た。
理津と疾風が険しい表情で振り返る。
「…克雪は、この里で私の教育係をしていた方よ」
その声が憂いを帯びている。


