廊下を歩いていると、桜木と同じ着物を着た女がまた一人歩いてきた。
「露李様、お帰りなさいませ」
「ただいま」
無表情な青白い顔の彼女は守護者たちに向かって再び頭を下げた。
「守護者様のご案内を致します雛菊と申します。どうぞこちらへ」
「分かりました」
物言いたげな年下たちより先に文月が返事をし、露李たちとは別の方角へ雛菊の後ろについて行く。
それを見届け、桜木は廊下の突き当たりにある扉を押して開けた。
地下へと続く階段が伸びていた。
思わず顔をしかめる。
露李は地下に牢があることも知っていた。
「心配すんな、露李。俺がいる」
震えた手を結が包み込んで、囁いてくれる。
その間にも桜木はどんどん階段を下りていった。
一番下まで辿り着くと、そこには真っ白な風呂のようなものがあった。
白さに目が眩む。
湯気のこもらないことから、そこに溜まる水がお湯ではないことが分かったが──。
「風雅様はそちらへ。ここからは私が」
桜木の言葉に結は頷き、衝立のところで立ち止まる。
露李と桜木は中心部へと進んだ。
「これは何?」
服を入れる桶と湯が運ばれてくるのを見ながら訊ねると、桜木は無表情に露李を見た。
「禊の際にだけ訪れる、清めの泉です。…それでは失礼致します」
昔そうしていたように、桜木の手が露李の帯にかかる。
手際よく着物を脱がされ、湯帷子を着せられる。
「お入り下さい」
「……最悪だわ」
この時期に冷たい水の中に入るなんて。
足先から凍るような冷たさが身体を襲った。
ゆっくり身を沈めていく。
「そのようなお言葉は慎まれるよう」
「だったら桜木も入ってみてよ、寒いから」
「これは貴女様のための儀式です」
「私の着物どこやったの?」
「ここからは当家の巫女装束を着ていただきます」
自分との会話にならない会話に慣れている桜木の表情は小揺るぎもしない。
露李は溜め息をついて冷たさに耐えた。


