門の前に立つと、木製のそれが音を立てて開いた。
中に女が一人、立っている。
見覚えがある。否、よく知っている。
「──桜木(さくらぎ)、お久しぶりね」
かつて露李の世話役だった女だ。
「…お待ちしておりました。露李様、守護者の皆様」
恭しく頭を下げ、桜木はすっと中へ促した。
「こちらへどうぞ。歓迎会の準備は出来ております」
ついてくるように言われ、ぞろぞろと歩きだす。
露李を先頭に守護者たちが周りを固めるように歩いた。
桜木の冷たい目に、警戒心を持たずにはいられなかったのだ。
歓迎会ね、と露李は内心で笑った。
歓迎する気がないならそんな名前はやめておけば良いものを。
「桜木。お祖母様はどこに?」
「薫(かおる)様も席についております」
そう、と言ったところで、疾風が露李の服を引っ張った。
「どうしたの?」
「露李、これはどういうことだ」
そう言われ、その時初めて守護者たちが厳戒体勢なことに気がついた。
結と文月は悠々と歩いていながらも、辺りに目を配っている。
疾風、理津、静は露李の傍につき守りの陣形だ。
「気づかないのか。すごい邪気がお前に向けられている」
「ああ、いつも嫌な感じがするのよこの家」
慣れてしまったためか何とも思わなかった。
言われてから少し意識を向けてみると、恐ろしいほどの気が漂っている。
「うわ、気持ち悪」
思わず声をあげると、桜木が振り返った。
「何か?」
桜木は気づいていないのだろうか、と疑問に思ったがそれもすぐに消えた。
気づいていても言わないだろう。
そもそも邪気に慣れすぎて、もう感じないのではないだろうか。
「いえ。歓迎会はどちらで?」
「本邸の広間でございます」
「ああ、あそこね」
あまり行ったことはなかったが、だだっ広い部屋だったという記憶は鮮明にあった。


