車に近づくと、運転手が降りてきた。
黒い髪に、一房だけが栗色が混じっている男だ。
「露李様でお間違いないでしょうか」
「ええ。この姿に見覚えがあるでしょう、瀧谷(たきや)」
何度か、学校への送迎をしていた男だ。
「間違いがあっては困りますので」
瀧谷はにこりともせずにドアを開けた。
「露李様と、守護者様の代表の方をお一人。そう命じられております。未琴様と他の守護者様はあちらへ」
手で示された車から、もう一人が降りて立っていた。
「あれは…常夜(とこよ)ね」
「左様でございます」
慇懃な態度。
以前はこの慇懃さに無礼がついていたものだが。
「結、俺はお子様たちの世話しとくからお前乗りなよ」
「おー、頼んだ。じゃあ俺と露李、あと四人はあっちなー。棺は──」
文月と結がやりとりしている間に、海松が運んできてくれたようだ。
瀧谷と常夜が棺を車に乗せた。
「じゃあ、また後で」
そう言って乗り込む。
露李に続いて結が乗り、四人も続いた。
「お気をつけて、露李様」
「うん、ありがとう海松ちゃん。ここをよろしくね」
「もちろんです」
海松と露李が笑い合い、開けた窓からまた水無月が露李の頭を撫でた。
「行ってらっしゃい」
「はい。行ってきます」
水無月が結を見据える。
「風雅」
「何だー?」
「──露李を頼んだ」
「任せろ!」
その返事で満足した水無月。
窓を閉めるように促され、結がボタンを押す。
ガラス一枚で空間が隔てられた。
と、瀧谷と常夜が戻ってきた。
水無月が二人に恐ろしい形相で何かを囁く。
「…何言ってるんですかね」
車内の露李が呟くと、結はおかしそうに笑った。
「ま、想像はつくけどなー」
車に乗った瀧谷の顔が青いのを見て、また結は笑うのだった。


