「どうなんだ」
「好きだよ」
疾風が僅かに目を見開いた。
「静くんを嫌いなわけないでしょ。嫉妬ってのはよく分かんないけど…でもまあ、向こうも遠慮とかあるしもうちょっと仲良くなれたら良いなぁ」
「…そうか」
脱力したような声音で言ったきり、疾風は黙ってしまった。
隣で理津がくつくつと笑う。
「何よ。何も変なこと言ってないじゃない」
「いやぁ、最高だわ露李。疾風も分かりやすすぎだろ、牽制なのかと思ったじゃねぇか」
「うるさい。お前は引っ込んでろ変態」
「何だとてめぇ」
相も変わらず喧嘩っ早い。
理津は常識人のときもあるが、基本は奔放なので困ってしまう。
「もうーやめなよ二人とも。今は良いけど里に着いたらちゃんとしてよね」
何だかんだと言い合いを始めてしまった二人に言い放って、前方の先輩組のところへ寄る。
こんにちはーと言いながら後ろから飛びつくと、油断していたのか二人ともつんのめってしまう。
「おーまーえーなー!!」
「びっくりしたよ、露李ちゃん」
ああ文月先輩癒しー、と頬をゆるめる。
「どうしたの?」
「疾風と理津が喧嘩しだしたので、避難しに来ましたー」
「ああ、それはそれは」
疲れるね、と笑いかけてくれる。
その笑顔に笑い返すと、結が露李の頭をパシリとはたく。
「何するんですかー!」
「お前がボサッと見つめ合ったりしてるからだ!」
「それを言ったら先輩も油断してたじゃないですか!」
「お前が飛びついてくるとは思わねーだろ!」
「何時なんどきでも油断は禁物ですよっ」
「それは仲間内に適応させるもんじゃないっ!」
「文月先輩はそんなに驚いてませんでした!」
「こいつは顔に出ねーだけだ!」
「冷静ですからねっ、文月先輩は!」
「俺も冷静だろーが!」
「すみません、どこがですか?」
「うるせー、むっつりスケベよりマシだ!」
変な形で引き合いに出された文月がにっこりと結の肩に手を置いた。
露李からは見えない角度で何が見えているのか、結が分かりやすく戦く。
「何、勝手なこと言ってるのかな?」
「あ、いやそのこれはだなー文月…文月?」
「むっつりスケベ。そう。そう思うんなら良いけど、それならお前はガッツリスケベってことで良いんだよね?」
「は、はあ!?」
「あれ?違った?」
おかしいなあ、と言う文月の笑顔が黒い。
露李も固まっていると、文月がくるりとこちらを向いた。
「露李ちゃん」
「はいっ。何でしょうかっ」
「これから突然飛びつくのはやめようか?」
「はいっ。了解しましたっ」
文月の綺麗な笑顔に、二人揃って軍隊のように敬礼するのだった。


