しばらくすると、文月と疾風も帰ってきた。
水無月も稽古から戻り、暖かい部屋で和やかに時を過ごす。
「露李ー、バスどんな感じ?」
帰路を確認していると、時刻表を覗きこんだ水無月がにっこりしながら訊ねてくる。
「やっぱり人避けしてあるから本数も少ないかなぁ…どの時間帯に乗れば良い感じに着くんだろ」
来るときに時間を確認しておけば良かった、と後悔。
水無月は時刻表の薄紙をちらりと見てから、これとこれ、と指を差してくれる。
「ありがとう、じゃあこの辺りかなあ」
「うんうん。消耗しないためにも、バスで行くのは良いと思うよ」
いざというときに力が無かったら困るからね、と水無月は微笑んだ。
「でね、露李。俺はここに残ろうと思うんだけど」
「え…?」
少し、驚く。
水無月はいつも一緒のように思えていた。
それが当たり前でなかったことを改めて知る。
「神社守るのに誰か残ってた方が良いでしょ。俺は神影に面が割れてるし、それに向こうからしたら守護者がついてることの方が大きいんだろうしね」
確かにそうだ。冷静な考えだった。
寂しいなどという自分の子供っぽさに、露李は苦く笑う。
「不安?」
「……ううん。守護者の皆がいるから。でも、兄様はずっと一緒にいるって感じだから」
そう漏らすと、水無月は一瞬だけ目を伏せ、柔らかく笑った。
「──ずっと一緒だよ」
その言葉を貰えて、嬉しいはずなのに。
なぜか、水無月がどこか遠くへ行ってしまうような気がした。


