「疾風はどうしたんだ?」
「文月先輩も帰ってきてませんね」
理津と静が訊ねると、結が岩場の方を指差した。
「何か忘れ物だってよ。文月も一緒にいるんじゃねーか?特に異常も無かったからな」
ああ、と二人が納得する。
まだ何か起こったわけではないし、いちいち心配していてはキリがない。
文月も守護者の一員だ、何かあれば伝達手段くらいは思いつくだろう。
「ま、久しぶりだしなーこんな長閑なの」
「そうですねえ。このまま続けば良いですが」
きっとそんなことは有り得ない。
風花姫という存在がある限り、終わらない。
花霞が無くなっても、その言い伝えや風花姫の伝承は残っている。
永遠の幸せなどない。
だから、一瞬を大切にするのだ。
「ああ、露李。里に帰るの、いつにすんだ?」
ふと思い出したのか、結が訊ねてくる。
「早い方が良いかなぁと。だから、そろそろ…」
行かなくては。
未琴を棺に納めるのも露李の仕事だ。
「りょーかい。おい、お前らいつでも行けるようにしとけよー」
「分かりました」
「おう」
学校が始まるまで、日がない。
早く、行かなければ。
露李は雪がカシャリというのを、じっと聞いていた。


