【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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 それからは穏やかな日々が続いた。

勝手に歩き回ることは出来ないが、守護者たちは修行や結界の見回りなどの仕事の合間に露李との時間を作ってくれたので、特に不自由はしなかった。


何より、露李とて何もしていない訳ではなかった。

祈祷や神事の舞の練習、掃除など細々と海松と共に働いていた。

露李は申し訳なさから水無月に朱音にしたように力を授けることを申し出たが、断固として断られてしまった。

水無月は常に結と剣術の手合わせをしたり、術を唱えたりと励んでいる。

そうした日の、少しずつ暖かくなってきた頃。


露李は雪融けが始まった森で、疾風と結の見回りの手伝いをしていた。


「…ここは問題ないな。空気も綺麗だし、誰かが通った形跡もない」


疾風が言うと、結もそうだなーと返す。

しかしその結の顔には疲れたような色があり、露李と疾風は顔を見合わせた。


「疾風疾風」


翡翠の気が満ちている中、疾風にこそこそと近寄っていく。


「何だ」


「結先輩、変じゃない?元気はあるけど、疲れてるっていうか。覇気がないっていうか」


何かあったのかなあ、と頬に手を当てる。

あるとすれば露李たちも無関係ではない事の方が多い。

疾風も少し考え、


「最近、やけに本を読んでるな。あいつらしくもない」


と答える。


「でも、星座とか好きだし。本なら読むんじゃない?」


「いや、そういう類いのやつじゃない。小難しい感じの」


うーん、と二人で考え込んでいると、不意にクルリと結が振り向いた。

思わず二人で固まってしまう。


「何だー?お前ら」


「…いえ、何もないっすよ」


「うんうん、何もないです」


結は怪訝な顔をして、スタスタと寄ってきた。


「な、何ですかっ」


「何ですかじゃねーよ、お前らが見てたんだろ」


「結先輩、今日なんか疲れてません?」


単刀直入に尋ねると、結は驚いたような顔をしてからにかっと笑った。


「何だー、結様の様子が気になって仕方がねーって感じか?」


「違います。露李も俺も、心配しているんですよ」


真面目な疾風が結の目を真っ直ぐ見る。

結は苦笑し、ぐしゃぐちゃと露李と疾風の頭を撫でた。


「お前らに心配されるようになったら俺も終わりだなー!…何でもねーよ、昨日、文月とちょっとやり合っただけだ」


それは珍しい。


「文月先輩と?だから今日そんな冴えないんですか?」


そう思い、意図せず言ってしまう。


「冴えない!?」


ああ、やばい、と思ったがもう後の祭りだ。

疾風が溜め息をつくのが聞こえた。