「先輩に何があるっていうの──?」
疑問ばかりが残る。
月明かりに照らされたままそこに座っていると、森の入口から誰かが入ってくるのが分かった。
浅葱の光がスーッと飛んできたので文月だと分かったが、気配は二人分ある。
すぐに翡翠の風が吹き、結も一緒だと知って安心する。
「露李ちゃーん。いるー?」
文月の声だ。
「はーい!」
大きな声で返事をすると、走る速度の足音が向かってきた。
間もなく二人が姿を現した。
「二人ともどうしてここにいるんですか?」
「どうしてってお前」
結が呆れた顔で腰に手をあてた。
その仕草に首を傾げる。
「結界破っただろー、森の」
「え?破ってませんよ」
「ほんとかー?風吹きまくってる中、森の中歩かなかったか?」
覚えがあった。
ごうごうと風が吹いて寒かったし、うねうねと曲がる道を歩いた。
「歩きました…」
「それそれ。露李ちゃん、それ結界だから。風が吹いてるのは結の人避け用だし曲がり道は俺のだよ」
爽やかに文月が笑って教えてくれる。
「すみません」
「ったく心配させんなよなー!にしても露李、ここで何してたんだ?」
「夜の森とか好きなんですよ。あの、それなんですけど、さっき女の人に会って」
そこまで言うと、文月がぱっと笑顔になった。
「ああ、会ったんだ?芽生に」
「知ってたんですか」
「メイ?」
露李は結と顔を見合わせた。
結も知らなかったようだ。


