「貴女に封印する力があるなら別ですが、現実違います。私はそれを覚悟してここにいる。そこまで馬鹿にされる覚えはないわ。安直な考えで言わないで頂きたいものです」
露李の気迫に圧され、後ずさる。
「私は皆に守って貰うばかりでいるつもりは無いの。私だって好きで風花姫になったわけじゃないわ」
険しく言い放った露李の言葉に澪子の目がつり上がる。
「何てことを!」
「申し訳ないけれど、誰かを盾にしてまで生きたくないわ。けど、皆がいるから──私は生きて、あれを一生封印する。…私が死んで解決するならとっくに自分から死んでるっての!」
最後は堰が切れた。
自分本意な怒りが、流れるように出てくる。
澪子はそう捲し立てた後、自分も傷ついたような顔をする風花姫に戸惑った。
「ごめんなさい…」
「何で姫様が謝るの」
露李は悔しそうに俯き唇を噛む。
「分かってます、自分勝手だって。私が皆を危険に晒してるのは本当ですから。…でも、もう死ねないんです。約束したから」
そして顔を上げ──
「駄目だよ、氷紀」
澪子の後ろにいる人物に声をかけた。
「嘘っ、」
ヒヤリとした感触が澪子の首筋にあった。
「何が嘘って?」
ドスの効いた声から、かなり怒っているのだと分かる。
「浅はかな雑魚ごときの理想で露李を苦しめるな、害悪。それはあいつらの為ではなく、貴様自身の願いだろう」
澪子に後ろは見えないが、水無月の目が金色に変わっていた。
炎雷鬼が澪子の首に添えられている。
「どうして貴様らは、自分のことしか分からない?」
背後から迫る怒気と妖気に、澪子の目が恐怖に見開かれている。
「露李が目の前に居なければ、殺していたぞ」
そう言い捨て、水無月は震える女を放り、露李の手を取った。
すぐさまへたりこんでしまう澪子。
「露李、行くよ。風雅たちが心配してる」
「うん」
打って変わって優しい口調で放たれた言葉が、澪子をさらに追い詰めた。


